Q:現在はどこで、どのようなお仕事をなさっていますか。
卒業後、三菱商事という総合商社に入社し、2016年4月から中央アジアのカザフスタンで事務所長の仕事をしております。カザフスタンには首都アスタナと、商業都市であるアルマトゥイの両方に事務所を構えており、主な仕事は両事務所の現地社員と共に、既存ビジネスの拡大や新規ビジネスの発掘・推進です。会社からカザフスタンに駐在している社員は私のみなので、基本的には私一人で現地社員の育成や査定・給与交渉、経理処理や客先との面談・契約書のチェックまでのほぼ全てをロシア語でこなします。比較的若くして事務所長を任されたため経験不足を感じる場面もありますが、刺激的で充実した毎日。ロシア語学科に入学していなかったら、このような貴重な経験は出来ていないだろうなと思います。
Q:なぜ、現在の職場を選んだのですか?
「海外事業を広く展開していること」、「刺激的な環境であること」、「時代に合わせて業態を変化できること」。この3つを軸に業界研究をしたところ、総合商社という結論に至りました。総合商社は、原油・天然ガス・石炭・金属と言った資源、自動車・化学品・タイヤ・食品と言った消費財、さらには不動産・鉄道・空港・物流や新エネルギーまで幅広く扱い、時代や顧客に即した機能を様々な国で提供し、利益を上げる業態。また、当時の人事担当始め、OB訪問した先輩社員や面接官の全員が、当時の私には輝かしく映り「目指している環境はここにある」、そう強く思い今の会社を志望しました。内定後、全国から集まった内定者も皆キラキラ輝いており、今でも互いに刺激を与え合いう関係。世界各地・各分野で活躍する同期106名は、一生の財産です。ちなみに同期の中でロシア語学科卒業は私のみ。CIS諸国のことについて質問を受ける等、頼られる場面もあります。
Q:ロシア語学科で学んでよかったと思うことは何ですか。
同級生は勿論、先輩・後輩、教授陣とも強い絆で結ばれること。ロシア語は難解な言語と言われています。だからこそ教授陣の指導も熱が入りますし、時に厳しいこともあります。ロシア語の難解さも手伝って、投げ出したくなるような時があったことも事実です。そのような時、隣を見れば自分と同じようにロシア語の試験や卒論執筆に向き合い、励ましてくれる仲間がいます。そして優しく指導して下さる先輩方、時には良い刺激を与えてくれる後輩もいます。それでも諦めそうになっても、上智大学ロシア語学科には、温かく包み込んで下さる教授陣がいらっしゃいます。他の卒業生の方々が指摘される、ロシア語やCIS諸国の政治・経済・文化の専門家育成は勿論、私はロシア語学科で学ぶ中で、厳しい中にも温かみのある、まるで極寒の中、仲間とウォッカを飲み語り合うような人間の温かみや深み、それらを通して生まれる真の絆を学ぶことが出来たこと、これが一番よかったと思うことです。
Q:在学中に一番印象に残っていることは何ですか。
最終学年での「ロシア文化ゼミ」です。ゼミ創立年度ということもあり、教授・学生が一体となって様々な角度からロシア文化について研究しました。チェーホフの短編小説がきっかけとなり進学を決めたロシア語学科のゼミで、最終的にチェーホフの戯曲を題材に卒業論文を執筆できたことは、担当教授との運命的な出会いがあったから。夏に開催したゼミ合宿=ハバロフスク研修も印象に残っています。ハバロフスクで日本語を学ぶロシア人との交流、観劇、アムール川遊覧、教授や仲間と飲んだウォッカ、飲み潰れた男子学生を皆でホテルの部屋に担ぎこんだこと。全て鮮明に記憶に残っています。今でもゼミの仲間を中心に集まる機会があり、この3月には教授は勿論、我々一期生から現役学生まで集まり、大同窓会を開催。大変有難いことに、私のカザフスタン赴任も祝ってくれました。
Q:後輩へのメッセージ
私自身、入学前は巷で言われる「地獄のロシア語学科」に入学することを嬉しく思いつつも、不安でいっぱいでした。ですが、私は一度も地獄を味わったことはありません。入学直後にテニスサークルに入り、学費を稼ぐためにアルバイトも掛け持ち、高校から続けていた国際交流活動も継続。3年生の時には幸運にも、とあるオーディションに合格し、役者として舞台にも出演。そのような中でもロシア語学科ではハイペースに、そして高度な授業が続きます。授業では出欠が取られ、予習・復習、宿題や小テストも多い。ではどうするのか? 答えは「全部やる」です。時に諦めざるを得なかったこともありましたし、挫折感を味わったことも当然あります。ですが、全て自分で決めたこと。頑張っていれば、地獄が訪れることもないでしょう。そもそも地獄だと自分が思わなければ良いのですし。
ロシア語を学びたい、そう思う学生さんにはいつでも歓迎してくれる環境がロシア語学科にはあります。私の「卒業生の声」を読んで下さった一人でも多くの方と、ロシア語学科卒業生合同の同窓会で、いつかお会い出来れば、これほど嬉しいことはありません。応援しています!